第20回広報・宣伝部長アンケート
毎年、本誌1月号では、巻頭で特集「広報・宣伝部長アンケート」を実施し、ご紹介しています。本年は20回目を数え、国内で広告展開している156社から回答をいただきました。2002年の国内景気は春先からやや明るさを取り戻し、7―9月期の実質国内総生産は前期比0.7%増と、小幅ながら回復基調であったといえます。上場企業の業績も、9月中間決算で大幅な増益基調でした。ところが、好調な企業の業績は輸出やリストラに支えられた結果とも言え、国内消費はデフレ経済の厳しい雇用・賃金情勢のもと冷え込んでいることが諸指標からうかがえます。業界の声を聞く限りでは、広告を取り巻く情勢に明るさを実感することはできなかったようです。2003年の広告動向を占う上で、今回のアンケート結果は意義深いものがあります。
まずはアンケート結果からご報告します。
宣伝費増加企業は微増するも、全体としては抑制傾向続
まず、アンケートでは2003年の宣伝費の見通しを尋ねた。結果は、図1に示したとおり、「増える」と「やや増える」合わせて16.7%と、前回の同質問における回答率(13.8%)を約三ポイント上回った。一方、「変わらない」がほぼ半数の47.4%、「やや減る」(23.0%)と合わせると前回同様7割に達した。
経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計(広告業)」を見ると、2001年8月から前年割れに入った広告業の売上高は、2002年にかけても前年割れの状態が続いている。
デフレの進行により賃金が減少し、民間消費は伸び悩んでいる。失業率も高く、景気の先行きは依然不透明である。しかし、鉱工業生産指数や輸出については2002年央から一部で明るさが見える。自動車関連、IT関連では景気回復への牽引役となる企業が出てきており、実際、上場企業の経常収益は前年比42%という大幅増になった。リストラに成功し体力を回復した企業が本業での戦いに出てくることが予想され、抑制傾向にあった広告出稿量が回復に向かう期待材料もある。
図1 [2003年の宣伝費は?]

さらに強まる経営とブランドの結びつき
次に、自社の広告活動上、重視していることを尋ねた。結果は図2に示すとおりであり、「コーポレートブランドを高める」が55.7%と、過半数になった前回(52.6%)をさらに上回り最高のスコアとなった。
企業の競争力を決定するものとして無形資産に対する注目が高まるなか、コーポレートブランド(CB)の重要性は経営者にも急速に普及しつつある。2002年は、企業経営にブランドマネジメントが本格的に導入され始めた一年であった。組織改正によってCBを管理する部署を立ち上げ、宣伝、広報、IRといった機能を集約する有力企業が相次いだことを反映した結果となった。
「企業イメージの向上」(42.3%)がそれに続く2位の回答となった。企業イメージはプラス・マイナス両面でその企業に影響をもたらすものであるが、CBの一要素としての企業イメージだけでなく、企業の説明責任、コンプライアンス(法令順守)が求められた出来事が多かったことも、回答を増やす背景となったと推察される。
「商品ブランド力の向上」(38.4%)もスコアを3ポイント上げ、前回の4位から3位に浮上した。とりわけ消費財を扱う企業の場合には、消費者のロイヤルティー獲得のために多様な取り組みを実施している。安定的に企業に収益をもたらすのは、強いブランド力をもつロングセラー商品である。競争に負けない商品をつくるために広報・宣伝部に与えられている任務は一層重いものになっている。
一方、スコアが一気に7.5ポイント低下し、前回の2位から4位に下がったのが「売り上げに結びつける」(35.2%)であった。前回はスコア・順位を上昇させており、これは、過去のアンケートでも景気後退局面によくある現象であった。今回、消費が好転したとは言えない状況のなかで広告を売り上げに結びつけるという回答が減少したのは、きわめて興味深い結果である。デフレ経済のなか、消費が期待どおり伸びないこと、さらには直接的な販売促進に費やす費用が増大していることが背景として推察される。
法政大学経営学部の田中洋教授(マーケティング論)はこの結果から、「いまだ確立されていないデフレ下のマーケティングを必死に模索している企業の姿が見て取れる」として、「経営面でできるだけ資本を効率的に使うことが重視されるようになった。このことが広告管理の面で自社の『強み』『資源』(=企業ブランド)を生かしていこうという方向性に表れている。商品のマーケティングコストについても『適正規模』の売り上げ達成への管理が厳しく問われるようになってきた」と読む。商品の爆発的なヒットを追求するのではなく、計画的かつ安定的な広告投入によって売り上げと利益を着実に実現していこうとする企業が増えたということだろう。
図2 [広告活動上の重視点]

一貫して高まる広告効果データの重要性
自社の広告活動に必要な情報として、どんなデータを活用しているかを尋ねた(図3)。「広告効果」が73%の方から挙げられ、1位回答となった。次いで前回と同様に2位で「市場動向」(58・9%)が挙げられたが、1位と2位の回答の差は拡大している。3位になったのは「媒体データ」(34.5%)であり、前回3位だった「消費者購買行動」はスコアを大きく下げた。
広告効果への関心は近年一貫して高くなっている。ターゲットに加えて媒体、クリエーティブ、訴求主体(商品や企業)といった要素と投下金額からの効果の算出が求められよう。情報の伝達速度は加速し、一人の人間においてさえ多様化が進む。プロダクトライフサイクルなど従来のマーケティング手法がそのままでは適用困難になりつつある時代、宣伝部に蓄積されたノウハウに依存する割合が高まっていくと思われる。
図3 [広告活動に必要なデータ]

企業戦略を踏まえたクリエーティブを
自社における広告クリエーティブ上の重視点を尋ねたところ、図4のような結果になった。「企業戦略との整合性」(68.5%)が1位、「商品・サービスの訴求」(64.7%)が2位と、前回と順位が入れ替わった。「企業イメージとの一貫性」もスコアを上げた。既に述べたとおり、CB重視の色彩が強かった今回の結果は、ここに別の形で反映されている。経営と広報・宣伝部の結びつきが強まっていることが端的に示されている。
図4 [広告クリエーティブの重視点]

「優れたブランド戦略」でソニーが最多回答
今回の最後の質問は「優れたブランド戦略を実践している企業」を一社挙げていただくものだった。約8割からいただいた回答のうち多数から挙げられたブランドは以下のとおりであり、これらで回答の過半数(52%)を占める。
- ソニー(34件)
- トヨタ自動車(15件)
- IBM(6件)
- NIKE(5件)
- 日産自動車(5件)
ブランド連想は主観的な要素が多く、一人ひとりの回答に挙げられた意図を読みとっていただきたい。回答は正式社名などに直すことなく、そのまま掲載している。
今回これらのブランドについては、継続的かつ一貫したブランド戦略の結果成功を収めたという事実や、CBの強さが商品ブランド力向上という相乗効果をもたらしていること、常に革新的な訴求をしている、など様々な意見が寄せられた。
誌上を借りて改めてご協力に感謝申し上げるとともに、読者の皆様に2003年のご多幸、ご繁栄をお祈りいたします。
(マーケティング開発部) |